『特命交渉人用地屋』

特命交渉人用地屋

特命交渉人用地屋

著者の前田伸夫氏は新東京国際空港公団成田国際空港株式会社の前身)の元職員で、成田空港建設時・拡張時の用地買収を担当した。過激派の空港反対運動が行われる中で、どのように農家と用地買収交渉を行ったか現場の実情を明かした書。担当を外され退職した後にも、現在に至っても未だに成田空港が完全オープンしていないことを憂いている。

公団職員も農民も官僚・政治家も結局は人間で、信頼を得るためには相手の立場に立って考え、泥臭く地道な積み重ねることが重要だと思った。
成田空港計画当初に反対派農民が運輸省に陳情に行った際に、運輸省は門前払いで相手にしていなかったが、歴代運輸事務次官の中で唯一、中村徹が次官室に農民を招き入れコーヒーを出して話を聞いたことがあった。後に中村が公団副総裁に着任したときに、反対派農民は「中村さんが公団のえらいさんになった今なら、話し合いできる」と思った。
というエピソードが印象的だった。

本書は2005年に出版されたが、その後についての続編をぜひ読みたい。